糖尿病

糖尿病を発症している患者さん、あるいは定期的な健康診断(健診)などで血糖値の高さを指摘され、糖尿病を発症する可能性が高いとされる予備軍の方の診療を行います。

健診で血糖値が高かった、あるいは糖尿病が疑われる症状や訴えがあるという場合は、血液検査で血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー:血糖値の1-2か月の平均を反映する値で糖尿病の診断や経過が良いかどうか判断する際に用いる値です)を調べます。どちらも当日中に結果がわかりますので、結果をもとに治療方針についてご相談します。

以下の症状に心当たりのある方は、一度ご受診ください

  • 健診等で「血糖値の異常」を指摘された
  • 尿の回数が多く、量も多い
  • ひどくのどが渇く
  • 普段の量を食べているのに痩せてきた
  • 夜間も排尿のために起きるようになった
  • 左右対称に足先や足の裏がじんじんとしびれる

糖尿病について

糖尿病とは、血液中に含まれるブドウ糖(血糖)の濃度(血糖値)が、正常範囲を超えて慢性的に高くなっている状態を言います。

食事や糖分が含まれた飲み物を飲むなどで血糖値は上昇するのですが、通常であればブドウ糖は血液中から細胞に取り込まれ、体を動かしていくエネルギー源などになります。
血糖値は高すぎも低すぎも体にとって問題となり、膵臓で作られるホルモンの一種、インスリンがちょうどよく分泌されることで、血糖値はバランスのとれた状態を維持しています。
インスリンの作用が低下することで血糖値が上がり、糖尿病の原因となります。

1型糖尿病と2型糖尿病

糖尿病は大きく2つのタイプに分類されます。
ひとつは1型糖尿病です。これはインスリンが作られる膵臓のβ細胞が破壊されるなどして、インスリンを分泌する能力が低下し、血糖値が上がってしまうタイプです。破壊の原因は特定されていませんが、免疫反応の異常で起きると考えられています。
生活習慣に関係なく、若い世代の方によく発症がみられるのも特徴です。
1型の場合は、数日~数か月の期間で急激に発症することが多く、のどが異常に渇く、多尿、体重減少、さらには呼びかけへの反応が悪くなるといった症状が現れるようになります。1型糖尿病の場合には基本的にはインスリン治療が必要です。

一方の2型糖尿病は、時間をかけてゆっくりと進行するので、発症した時点で自覚症状が現れていることはほとんどありません。そのため発見が遅れるわけですが、その間も血管内にブドウ糖があふれているので、常に高血糖による悪影響は受けています。
2型糖尿病の場合はインスリンの効きが悪い、または(および)、出る量が不足している状態となっています。
治療としては食事運動療法のほかに、内服治療、インスリンを含む注射薬による治療があります。その後、さらに血糖値が上昇すると、のどが異常に渇く、多尿、体重減少、さらには呼びかけへの反応が悪くなるといった1型糖尿病と同様の高血糖による症状がみられるわけですが、この頃はかなり糖尿病が進行している状態で、2型糖尿病であってもインスリン治療が必要となる場合が多いです。

また2型糖尿病を発症する原因ですが、遺伝による側面もあり、不摂生な生活習慣(過食や不規則な食生活、運動不足、喫煙・多量の飲酒、ストレス、肥満 など)をきっかけとして発症するとされ、その大半は中年以降にみられると言われています。ちなみに日本人の全糖尿病患者さんのうち、実に90%以上の方が2型糖尿病です。

そのほか上記の糖尿病以外にも、何らかの病気や薬による影響で発症する二次性糖尿病、妊娠中に問題となる妊娠糖尿病といったタイプの糖尿病もあります。

注意すべきは合併症

よく糖尿病は怖い病気と言われますが、恐ろしいのは同疾患を放置することで起きる合併症(ある病気に伴って起きる別の病気)にあります。
糖尿病発症後に高血糖状態が継続すると次第に様々な血管障害が起きるようになります。
小さな血管の障害は糖尿病に特徴的で、糖尿病網膜症(目の合併症)、糖尿病腎症(腎臓の合併症)、糖尿病神経障害(神経の合併症)は糖尿病の三大合併症と言われています。また太めの血管に動脈硬化が起こることで、脳卒中(脳梗塞、脳出血)、心筋梗塞、狭心症といった重病を発症することもあります。
このほかにも免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる、血行不良となって足が壊疽(えそ:腐ってしまい、ひどい場合には足を切断しなければならないこともある)を起こす、といったことも見られるようになります。
このようなことが起きないようにするには、早めに発症に気づき、血糖のコントロールに努めることが大切です。

検査について

糖尿病と診断をつけるための血液検査を行います。診断基準については以下の通りです。
なお当院では即日検査が可能です(75gOGTT:ブドウ糖負荷試験は当日行えない場合もあります)。

  1. 早朝空腹時血糖値が126mg/dL以上、あるいは75gOGTTの2時間値が200mg/dL以上、
    あるいは随時血糖値が200mg/dL以上
  2. HbA1c値が6.5%以上

治療について

検査の結果、糖尿病と診断されたら速やかに治療が開始されます。糖尿病を完治させるということではなく、目的は合併症を防ぐための血糖値のコントロールとなります。
なお治療内容につきましては、1型と2型で多少異なります。

1型糖尿病の場合、インスリン分泌が低下していることから、体外よりインスリンを補うことで血糖をコントロールしていく、インスリン治療となります。

2型糖尿病は、インスリンの分泌量が不足している、もしくはその効き具合がよくない状態で、インスリンはいくらか分泌されている状態です。
程度や状況によっては、まず生活習慣の改善(食事療法、運動療法)から始めていきます。
食事療法に関しては、適正エネルギーの摂取(食べ過ぎや肥満に気をつける)、規則正しく一日三食の食事をとる、栄養バランスのとれた食事に努めるといったことを実践していきます。
また運動にはインスリンの作用を高める効果が期待できることから、こちらも実践していきます。急に激しい運動を行う必要はありません、具体的には息が弾むくらいの有酸素運動(1回30分程度のウォーキングやサイクリング など)と筋力維持、強化のためのレジスタンストレーニングを組み合わせるとよいと言われています。
これまで実施していなかった方が急に始めるのはどうしたらよいか悩まれると思いますので、実現可能な運動内容を診療時にご相談できればと思います(合併症や持病によっては激しい運動が禁止される場合があります)。

生活習慣の改善だけでは血糖のコントロールが困難と判断すれば、内服薬による治療を行います。それでも血糖値を下げることが難しいという場合は、インスリンを含む注射薬による治療が行われます。
以前と比較して注射薬の種類も増え、週に1回のみでよい注射薬(インスリンではない)も登場しています。
必ずしも注射薬による治療が最終段階という訳ではありません(注射薬による治療をとお話すると「注射なんて使ったらおしまいだ。」とびっくりする患者さんがおられますが以前と少し状況が異なってきています)。

糖尿病による合併症を起こさないように、定期的に外来へ通院して頂き、良好な血糖コントロールを目指しましょう。